アンブレラ・レイラ

アンブレラ・レイラ 19


「今、チャイムが鳴った?」
電話越しの東南眼鏡にも聞こえていたようだ。
「……はい。僕……見てきます」

通話中のまま受話器を置くと、リリオは勇気を振り絞って玄関に近づいた。
普段はチャイムが鳴っても居留守を決め込むのだが、一人じゃないと思えている間に行動したいと思ったのだ。何より東南眼鏡の優しさに応えたかったのだ。

いつ破裂してしまうかわからない時限爆弾のように高鳴る心臓を手で押さえながら魚眼レンズを覗いた。

レンズの奥の人物を見た瞬間に時限爆弾が“ドカン”と爆発する。

あり得ないことが起きた。

あまりのことに自分が不登校で人と話すことが苦手になってしまっていることすら忘れてしまった。

リリオはすぐに電話口に戻り叫ぶように言った。
「――東南眼鏡さん! 今、うちにレイラが来ています!」

「なんだって? 本当かい?」
 
次に自分の口から出てきた言葉にリリオは驚かされた。

「……僕、出てみます」

不思議と出来る気がした。
先ほど東南眼鏡が言った“私も知りたい。これからも観察を続けてくれないか?”という言葉がリリオに勇気を与えたのだと思った。
リリオは痛感していた。
今までは本当に自分ばかりだったと。
部屋の中で自分の苦しみのことばかり考えていたと。

東南眼鏡のためにもなる、と聞いただけでこれだけの力が出ることに戸惑いさえしてしまった。“自分のため”に“自分の以外の誰かのため”が加わると何倍、何十倍もの力が出せるという事実を初めて知った、いや、思い知った。
「本当に出来るかい? 無理はしなくていいんだよ?」
「……やれます」
リリオは受話器をその場に置いて、玄関に向かった。
そして、深呼吸をしてから鍵を外し、ゆっくりとドアを開けた。

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