アンブレラ・レイラ

アンブレラ・レイラ 16

予想外の事実だった。

その言葉を聴いてから一秒にも満たない間に昨日から物凄く失礼なことを言ってしまっていたのではないか? と不安でいっぱいになる。なにせ観察日記まで付けていたのだ。謝らなければ、と必死に喉の奥から声を出そうと試みるが、はっはっ、と短い息がこぼれるだけだった。

「びっくりしたかい?」
東南眼鏡の声に怒気は含まれていなかった。

「は、は、はい。あ……あの……ごめんなさい」
自分がはやり弱虫であると再認識してしまった。東南眼鏡が怒っていないことがわかったからこそ謝罪することができたのだ。それでも謝罪ができたことで線香花火ほどの小さな勇気が体の中に芽生えたのがわかった。

――この勢いのまま聞かなければ。
リリオは大きく深呼吸をした。この数ヶ月間追い続けた謎がついに解明されるときが来たのだ。この結果が自分にきっかけを与えてくれるかもしれないのだ。

「――あ、あの! レイラは傘を集めていったい何をしているのですか?」

東南眼鏡からの返答を待つ一秒にも満たない時間がリリオには何時間にも感じられた。呼吸を忘れてしまうほど期待が胸に膨らんでいく。

そして、ついに東南眼鏡は答えた。

「……実はね……私にもわからないんだ」

結果は期待外れのものだった。

それでもその後、東南眼鏡はリリオにレイラのことを詳しく話して聞かせてくれた。

「まだ小学生の君に言うことではないかもしれないが」

との前置きのあと始まったその話は『東南眼鏡とレイラは仲の良い親子だったのだが、彼が職に就き家を出ると、燃え尽きてしまったのか、まだ若かったが少しずつ様子がおかしくなってしまった』というものだった。

彼は彼女の症状に気付くと、すぐに実家に戻り一緒に住み始めようとしたという。しかし、その矢先、恋人に子供が出来て結婚することになった。いずれは同居することは決めていたのだが、子供がもう少し大きくなるまで様子を見ようと言っているうちにレイラの奇行が始まり、今では自分を息子と認識しているかどうかも危ういようで、仕事が早く終わった日には家の前を通り、レイラの様子を伺うことにしているとのことだった。それこそが東南眼鏡のあの行動の正体だったのだ。

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