アンブレラ・レイラ

アンブレラ・レイラ 12

レイラの外出、帰宅時間、傘の本数、東南眼鏡の来訪日を観察日記に記していく日々がダラダラと過ぎていった。

クラスメイトの顔を見てしまったあの日、東南眼鏡のその後の行動を確認することはできなかった。
それ以来“決定的な瞬間を見逃してしまったのではないか?”という落胆が常にリリオを支配し、それ故に彼のその後の行動が無性に気になって堪らなかった。

家の中にレイラはいなかったのだから、何も起きなかったと考えるほうが妥当であるような気もしていたが、もしかしたら“何か”に近づけたかもしれない。その“何か”は自分が再び学校へ行けることになる“何か”になったかもしれない。
いや、もしかしたら明確な答えが示された可能性も0ではない。
ともかくリリオは多方面から悔やみ続けていた。

そんな中での観察の成果は【レイラは相変わらず毎日傘を集め、東南眼鏡は夜に何度かレイラの家の前を通る】の一行に集約されてしまうほど内容のないものになってしまっていた。
あの日を機に、代り映えのない事象の観察に集中できなくなってきてしまった。
理由は後悔だけではない。
クラスメイトの顔を見てしまってからは狂おしいほどの劣等感に苛まれた。
学校も行かずに奇妙な老婆を観察している自分が恥ずかしくて仕方がなくなってしまっていた。挙句には観察日記の存在そのものが自分の駄目さの証拠品のような気すらしてしまう始末だ。
それでも他にできることなどなかった。
何もしないことには耐えられそうになかった。
結局、ダラダラと惰性で観察日記を続けるしか道はなかったのだ。

今日もリリオは、朝起きてから、東南眼鏡の来訪を待っているたった今まで、
“そろそろ何か行動を起こさなければ何も進展しないだろう。しかし、外へも出ることが出来ない弱虫の僕にいったい何が出来るのだろうか?”
なんて右往左往とそんなことばかり考えてしまっていた。

レイラの謎を解く、という大義名分の中に隠していた「また学校に通えるようになりたい」という気持ちが先走るようになってしまっていたのだ。
何もせずに夜になっていた。
時計を確認する。二十時五分。
東南眼鏡は姿を現した。
そして、いつも通りの行動をなぞって、レイラ宅を後にした。

――そうだ!

何か行動を起こさなければ、と常に考えていた結果だろう。
リリオはどうにかして東南眼鏡と接触できる方法、自分の現状を加味した上で彼と連絡を取る方法を模索しようと決めた。

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