アンブレラ・レイラ

アンブレラ・レイラ 6

一日一枚、考察ページが入るときは二、三枚を使用している六十枚ノートが後半に差し掛かったときだった。
レイラ宅の前を通る人物の中に不自然な動きをする男を発見したのだ。

その男は年のころは三十代半ばといった背の高い男で、特徴は黒縁眼鏡と浅黒い肌。彫りの深いその顔の造詣と相まって日本人であるとは思うが、東南アジア系にも見えなくもない。
その男は週に二、三回、夜八時頃、レイラ宅の前を、中を気にする素振りを見せながら通るのだ。その行為自体は珍しいものではない。なにせレイラは有名人だ。実際、レイラ宅の前を通る人はまず例外なく家の中を覗こうと横目でチラチラと気にしている。
しかし、リリオは毎日、寝ているときと観察日記を付けているとき以外はレイラ宅を観察しているので、その行動の不自然さに気付くことができた。

レイラ宅の位置から考えると、その前を通るということは柊タワーハイツに向うことになる。そして、それが週に二、三回だということは、男はこのマンションの住人ではないのだ。住人でなく、このマンションにこの頻度で来る理由で考えられるのは、家族、もしくは恋人が住んでいることくらしかない。
しかし、彼はマンションの中に入るとすぐに出て、もう一度、レイラの家の前を横目で見ながら通りすぎるのだった。マンション内の滞在時間は五分にも満たない。五分間では中庭に入ることくらいが関の山だろう。
それらを踏まえてリリオは男の目的がレイラ宅にあるのではないか? と推理した。
しかし、それはまだ確信には至っていなかった。大の大人がわざわざ週に二、三回もレイラ宅の中が気になっているというだけで尋ねてくるなんて、にわかには信じられなかったのだ。

リリオはさらに考えた。
そもそも彼はいったいマンションの中庭で何をやっているのだろうか? 
リリオの持つペンが勢いよく走った。
【考察・新たな疑
しかし、すぐに止まってしまった。今日、男に対する考察をまとめ、明日からは男が来たのかどうかを記す項目を作ろうとしたのだが、男をどう呼べば良いのかがわからなかったのだ。便宜上、彼にも『アンブレラ・レイラ』というような呼び名が必要だった。
しばらく悩むと、その手は再びスムーズに動き出した。

【考察・新たな疑問“東南眼鏡”の目的とは?】
 
そこに先ほど考えたことを次々記入していくがその答はわからなかった。

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