小説(裕次郎)

人生で一番はじめに書いた小説 501 ②

うーん。

すっごい下手だし、テーマも若い。

売ってても買わないなー

ちなみにデビュー作の「そりゃオレだって死にたいさ」の下敷きになった話です。

地の文で「美味しい」と書いてから台詞で同じことを言わせるなんて今では絶対にしないなー。

 

 

1・ダブルスタート
ダブルリング内のいずれかにダーツが刺さらない限り、真の意味でゲームはスタートしない。ダブルリング内に、ダーツが一本入ると初めてスコアの採点が開始される。その後は、ボード上のナンバーに刺さった全てのダーツを採点することが出来る。
●●●●
二月のお勧めメニューである“ニンニクとキノコの温製サラダ”が男前のウェイターさんによって運ばれてきた。軽く会釈をして、テーブルに置かれたそれをすぐ自分の取り皿に移す。そして箸で口の中に運んだ。見た目以上に美味い。
「いやぁ、マジ美味いな! バーストラブは食いもんが全部美味いからいいよなぁ」
向かい側に座る川崎辰夫“たっちゃん”に同意を求めると、たっちゃんも満面な笑みで口をモグモグとさせながら返してきた。
「だよね、酒も美味いしさ。言うことなしだよ。気分いいからまた乾杯しちゃおうか?」
そして、俺たちは飲み始めてから二時間で今日八回目の乾杯をした。
たっちゃんは俺にとって珍しくいい関係を築けた友人。出会いは半年ほど前、場所はここバーストラブ。お互いダーツ覚えたての頃、田代さんに紹介してもらったんだ。
俺は、はっきり言って友達が少ない。いないと言っても過言ではない。いやいや、知り合いはたくさんいるんだ。でも友達はいないんだ。きっと田代さんはそんな俺を見かねて紹介してくれたんだろう。嬉し恥ずかし、ちょっと悲し、そんな感覚だったけど、たっちゃんはいい奴だった。すぐに誰も信じたりなんかしない俺が心から“大切な友達”と思える希少な友達になれた。
だからといって俺とたっちゃんは趣味が合うとか、信じ合えたりとかそういう友達ではない。タイプだって全く違う。今日の俺たちの服装をとって見ても、俺は黒いレザーのライダースジャケット(ちなみに裏地は豹柄)に必要以上にボロボロにしたジーンズでパンクでロックな格好をしているのに対し、たっちゃんはグレーの無地のパーカーに細身のジーンズとさっぱりした格好をしている。俺たちが犬だとしたらダックスフンドとかチチワといったように種類が違うはず。まあどちらも小物だから小型犬だろうが。結局俺たちは違う種類の人間ではあるが、世間一般に言う“馬が合う”っていう感じなのだろう。
「――んで、結局のところトシヤは何であの娘を振っちゃったわけ?」
「うーん、明確な理由は俺にもよくわかんないんだけどさ、逃げ出したんだろうな、結局さ……」
実は三日前、俺は九ヶ月付き合った彼女と別れた。今日の酒のつまみはその話だった。
「ん? 逃げ出したってどういうこと?」たっちゃんはモグモグと口いっぱいにサラダを頬張りながら言う。
「いや、なんかさ、好きな気持ちはあっても、なんか俺は向き合えないみたいだよ、人とも、出来事とも……なんもかんもね。なんか面倒くさくなっちゃうんだよなあ」
「なんだかわかるような気がする。俺も本気で物事と向き合うくらいなら、新しい問題起こした方がよっぽどマシだなって思えることがよくあるしね」
「すげーこと言うねぇ? でも確かにその通り。新しい問題に追われていた方がずっと楽だもんなあ。本気で物事に向き合うなんて俺の魂じゃ無理!」
俺はたっちゃんの、さらっとすごいことを言うこの辺の感覚が好きだった。彼は自然体で“かくあるべきだ”みたいなことを言わないから居心地がいいのだ。まあ、だからといって、たっちゃんに対しても、本当に思っていることを全て言えているわけではないけどね。でも、それでも俺は彼との時間はやっぱり大切にしている。
だって「俺もいちいち向きあっていたら魂が悲鳴をあげちゃう。それじゃ魂がとってもかわいそうだよ」なんてことを平気な顔して言うんだ。そりゃ楽しくなっちゃうよ。
「だよね。魂だって生きているんだから無理させちゃいけないよね? ああ、俺たち相変わらず優しすぎるな」
「ははは。つーか、俺たちほんっとダメダメだね? ちょっとヤバイかもね?」
たっちゃんを見ると“だめだこりゃ”と下唇を突き出しおちゃらけていた。俺はそれに対抗して“だっふんだ”という感じのアクションをする。もちろん顔も“だっふんだ”の顔。そして一呼吸置いて俺たちは二人同時に爆笑した。今日は一ヶ月ぶりに会ったこともありお互い酒がかなり進んでしまっているようだ。
そこで俺はトイレに立った。トイレに入った瞬間に笑顔から真顔に戻ってしまう。いや、決して楽しくないわけじゃない。今話していてとても楽しかった。しかし、実は、この恋愛が終わった事に関して俺は多少落ち込んでいたのも事実だった。自分から別れを言い出したわけだし、もちろん別れたこと自体について後悔しているわけではない。問題はその動機だった。それは、相手のことが嫌いになったとか、他に好きな人が出来たとか、そういった甘く切ないものではなかった。どっちかと言えば俺はその娘のことは好きだ。きっと今でも。
……ただ、付き合っていくことができなくなってしまったんだ。
付き合った当初はトキメキだとか世間一般で呼ばれるドキドキするような感情で俺とその娘の関係は成り立っていた。トキメキやドキドキなんてものは、所詮、諸行無常、どんな形であれ、いつかは消えてしまう。いや、わかっている。それは決して気持ちが冷めてしまったというわけではないということくらい。熱くなくなってしまった、ただそれだけなんだと思う。わかっている、わかっているんだ。それからさらに良い関係を築いていけばきっともっといい形になれるってことは。いくら俺が馬鹿だからって周りの人たちを見てればそれくらいは想像がつく。
でも、そのための労力は大変なもので、俺にはそれがどうしても出来なかった。
しかも、それはこの恋愛に限っての話ではなくて、俺はそういった努力が昔から出来た試しがないんだ。馴れ合ってしまうというか、いつでも肝心なことを話すってことを避けてしまうところがある。結局、何も言い合えずに付き合っていて、それは“別れていないだけ”というような状態なんだ。俺はその状態が堪らなく嫌なんだ。よく、真綿で首を絞めるように――なんていうが、まさにその言葉がしっくりくる。じわじわと取り返しがつかなくなるほど息苦しくなるんだ。一緒にいるだけで苦痛になるんだ。そして俺はいつでもそんな現状を打破するために努力することよりも逃げ出すことを選んでしまうのだ。
恋をして、熱くなって、熱くなくなって、鬱陶しくなって、息苦しくなって、逃げ出して、自分を責める。俺はいつでもこの繰り返し。恋が終わる度、もう恋なんてしないだとか、俺には人と付き合う資格がないだとかを自分に言い聞かせる。その時は本当に反省しているんだ。嘘じゃない。だけど俺は、別れてすぐでも、かわいい娘を見るドキドキしてしまったりするお茶目な所がある……性質が悪いと自分でも思う。
どうして俺はこんなんなのか、俺はインターネットやIモードを駆使して自分なりに分析した。その結果、人と本気で向き合えないことが一番の原因だろうという答えがはじき出された。難題だった。他人と向き合うだなんて、そんなことはどう頑張っても出来る自信がない。本音を話すなんて俺には到底、無理だ。ウィンドウズやスマートフォンを駆使してもこなすことなんてできない。たっちゃんの言う、本気で人と向き合うぐらいなら新たな問題に追われているほうがずっと楽だいう意見に心の底から共感してしまう。
……はぁ、相変わらず“正解の上”には全く程遠い。こんなことは考えたくもないが、下手をしたら遠ざかってさえいる……かもしれない……可能性は無きにしも非ず……かもしれない……断言したくないなあ。
切腹する勇気のない落ち武者のように右往左往と落ち込んでいても、たっちゃんと二人で話しているときは、どんなに重い話でもいつも不思議と笑い話みたいに話せる。辛い時でもその瞬間だけではあるが気持ちが楽になる。それが最高に気に入っているんだ。精神衛生上必要不可欠なお酒なんだ。
結局、トイレから出た後も二人でこんな自虐的な笑い話を一時間ほど続けた。
「んじゃ、ダーツでもするか?」たっちゃんが泡盛をクイッと飲み干してから言い出した。大分出来上がっているようだ。
「おう! 501でいいよな?」望むところだ。
そして、お互いを指差しあう。二人でダーツをやる前のいつもの光景。この酒は負けたほうの奢り。つまり命がけってわけだ。
俺とたっちゃんのダーツの腕は、昨日俺が勝てば、明後日はたっちゃんが勝つ、そんな感じで全くの互角。カウントアップで平均500前後といったまあ可もなく不可もなくの中途半端なもの。
今、俺たちがやろうとしているゲームは、最もスタンダードなゲームである501(ファイブ・オー・ワン)というゲーム。
各プレイヤーには、最初に各自501点が与えられていて、先にこの点数を残り0にすれば勝利。たったそれだけのこと……なのだが、ことをそう簡単に運ばせないための、二つの障害がある。その一つ目が“ダブルスタート”というルール。ダブルリング内のいずれかにダーツが刺さらない限り、本当の意味でのゲームはスタートしない。逆に言えばダブルリング内に、ダーツが一本入ったところで初めてスコアの採点が開始されるというわけだ。その後は、ボード上のナンバーに刺さったダーツ全てを採点することが出来る。スコアは1スロー3ダーツごとに、引き算していき、1スローずつ交代に投げて、スコアが先に0になれば見事勝利。ところが、ここに2つ目の障害が登場する。それは “ダブルフィニッシュ”というルール。 これは、最後に投げたダーツがダブルリング内に入って、 しかもそのダーツによって残り点数が、0にならなければいけないという決まりだ。
まあ、ダブルスタートとダブルフィニッシュはゲームをスムーズに行う為に省略されることが多いが俺たちは、この二つのルールも取り入れて501をやっている。
なぜかって?
かっこいいからだよ。
ともかく俺達はこれから501で勝負。
俺たちは席を立ち螺旋階段を抜け二階のダーツボードの方に向かった。

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