藤木の国のアリス~伽炉瑠博士の忘却装置~

藤木の国のアリス ~伽炉瑠博士の忘却装置~ 32

組子。はじめまして」
 どこから声がするのかわからないが、精一杯のボディランゲージで表現する鍵がしゃべっていることは確かだった
「は、はじめまして」
「自己紹介をしたいんだけど、まだ名がない。名前をつけてくれ」
「私がつけるの?」
「あたりまえでしょう。組子の鍵なんだよ」
「男の子? 女の子?」
「それは名前次第でしょう。はやくしてくれないとどう話していいかわからないわ。ほら女の子みたいな言葉遣いだろ?」
 組子はそこで考えることを辞めた。心は一切使わず脊髄反射のみで会話することに決めた。
「んじゃ鍵だからキーちゃんとかは?」
「それはさすがに」
「かぎお」
「どうかなー」
「んじゃ、キオでどう?」
 しゃべる鍵は飛び跳ねるような仕草をした。
「さて、君は男の子か女の子かどっちかな?」
 とりあえずのミッションを終えた組子が意地悪をしていると、
「話はすんだか?」
 眠たそうな声で芋虫が言った。
「鍵を手に持って」
 組子はしゃがみ込み、手を差し出すとキオが手にぴょんと飛び乗った。
「そのまま目をつぶって」
 脊髄反射で動く組子は芋虫の言葉に従った。
 芋虫は水パイプを大きく吸い込んで、キオを手に乗せた組子に吹きかけた。
 むせながらも目を開ける指令がなかったので、組子は目を開けなかった。
 すると、手の上にいたキオの重さがふと消えた。
 落としてしまったのか思い、目を閉じながらも地面を探ってみた。
 不思議な感触があった。
「目を開けていいよ」
 目を開けた組子はあきれ果ててしまった。

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