藤木の国のアリス~伽炉瑠博士の忘却装置~

藤木の国のアリス ~伽炉瑠博士の忘却装置~ 31

その剣幕に一瞬たじろいだが、芋虫のサイズがたかだか男性の親指程度だったこともあり、思わず、
「これでも精一杯の説明なんです」
 と言い返してしまい、
「すごく頭がこんがらがってしまって」
 と嘆いた。
 しかし「がらないね」と芋虫は水たばこをふかした。
 はじめは意味がわからなかったが、こんがらがらないね、の意味だと思ったら少し腹が立った。
「まあ、あなたにはわからないでしょうね」
 組子はぷいと顔を背けるが、芋虫はゆっくりと水たばこの煙をゆっくりと燻らせるだけだった。
 しばらくはトランプ兵があくせくと薔薇を赤く塗る音の中で二人とも沈黙を貫いた。
 沈黙していると、頭の中が冷静になってくる。そして、そのぶん混乱してくる。
――頭がおかしくなったわけじゃないよね? そうよ。きっとあの部屋の装置がこれを見せているんだよね――
誰にともなく尋ねてみる。当然、返事はなかった。なので、その問いに答えるのも自分だ。
――そうよ、あの装置のせいよ。だってほら、プレイステーションの大きさであんな綺麗な画質ですんごいゲームできるんだから、何百台分もの大きさだったじゃない? だったら不思議の国が再現できたってなんら不思議はないわ――
「組子」
 急に声をかけられたので、ふてくされていたのも忘れ振り返ってしまう。
「その鍵じゃ駄目だね」
「でも、これだと思うんだけど? ハムスターの顔になっているし」
「おい!」
「な、なによ?」
「組子じゃない。鍵に言っているんだ」
 すると、手に持っていた鍵がぐにぐにと動き出した。思わず鍵を地面に放ってしまう。
「痛い!」
 甲高い声が聞こえた。
 どうせ……と、思ったら、思った通りのことが起きた。手足もないのに鍵が立ち上がり、ぐにぐにと動きながらしゃべるのだ。ハムスターになった鍵の頭を上にしてそれはもうぺらぺらと。

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