藤木の国のアリス~伽炉瑠博士の忘却装置~

藤木の国のアリス ~伽炉瑠博士の忘却装置~ 29

視線を下ろし、矢印を追うと、背中をおそらくはチシャ猫のおしりで押され、一歩目を踏み出してしまった。
「なにすんの!」
と言うが、思わず二歩目を踏み出してしまう。三歩目にさしかかる中、振り返るが、もうチシャ猫はいなかった。
立ち止まる選択肢もあったが、立ち止まったところで何をしていいかもわからないので、諦めを原動力にした行動力が沸いてきたような気もする。
矢印に沿って歩き始めた。
生け垣の迷路の中にも迷いなく突入することができた。
きっと組子が泰葉を信じられていたことが組子の足を運んだのだろう。
「お、組子。偉いじゃないか」
どこからともなくチシャ猫の声だけが聞こえる。
「偉いってなにが?」
なんだか腹が立ってきた。
「ポケットの鍵を出しにゃー」
「もう、話すときくらい姿を現わしなさいよ!」
どうせこう言ったら出てこないだろうと思い、矢印に沿って歩きながらポケットから鍵を出すと先ほどと形状が変わっていた。
先ほどより一回り大きい。そして、鍵の頭がハムスターの形になっている。
どういうこと? と驚いて声が出そうになったが、チシャ猫にからかわれるのも癪だったので、ぐっと飲み込んだ。しかし、
「その驚きはもっともだにゃ。にゃはは」
と心を読まれたかのような発言をしてくる。
「うるさい! 馬鹿猫! それでこれをどうしろっての」
「組子は馬鹿だなー。さっきも言ったじゃないか。鍵穴に差して、音がしっかりなるまで回すにゃ。相手はハートの2だにゃ」
「はいはい。意味分からない。でも、どうせ教えてくれないんでしょ? ならいいわよ」
「その心意気だにゃ。それじゃ、頑張ってにゃー」
ちょうど最後の矢印の上に立っていた。
その先だけ生け垣が6メートル四方の正方形になっており、ちょっとした広間になっていた。
広間の真ん中には組子くらいの背丈の木が一本生えていた。幹の細いその木には白い薔薇が咲いていた。薔薇って木に咲くんだっけ? なんて頭によぎったが、考えていても仕方がないので足を進めると、木の手前で何かを踏んづけてしまい、転んでしまった。
「痛い!」
踏んづけてしまったのは大きなトランプだっだ。
そのトランプは起き上がり、しゃべり出した。
「あ、決して寝てないよ。私は薔薇を赤く塗らなければならないんだ」
頭が痛くなる。

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