小説紹介(裕次郎)

アンダーハーツより愛を込めて 立ち読み 3

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ネットショップにだいぶ前に自費で作成した小説を追加しました。

立ち読み1

立ち読み2

立ち読み3回目です。

宇宙規模の愛の話です笑

立ち読み

貯金は150万ほど貯まっていた。遊ぶ時間もあまりなかったし、彼女と別れてからは本当に外出しなくなったからか、自分でもそれほど金があることに気付かなかったくらいだ。
仕事を辞めたオレは終日寝倒した。朝も昼も夜も眠れるときは眠った。あとは何もしなかった。復讐するかのように眠りつくした。するとようやく正常な思考が出来るほどに回復することができた。そこまでになるのに三ヶ月の時間を要した。そして彼女と別れたことに酷く後悔している自分に気づいた。意識もせずに涙を流していることすらあった。
その後の一ヶ月は規則正しいものだった。夜の九時に寝て朝の七時に起きる。そして、彼女と別れたことを悔やむ。そして九時に寝て七時に起きる。その繰り返しだ。この一ヶ月が追い討ちをかけるかのようにさらにオレの人格に大きなダメージを与えた。
気付くと全てに対してやる気が消え失せてしまっていた。飯を食うのも面倒で、息をすることすら億劫になっていた。
何もしなかった。本当に何もしなかった。そのうちに無職の状態で親と暮らすのが気まずくなってきた。
部屋を借りた。オンボロ安アパート暮らしだがそれなりに満足出来た。一人で誰にも邪魔されない空間はオレを癒してくれた。しかし貯金額が如実に減った。
周りの皆のように毎日しっかりと働く気にはまだなれなかった。真剣に仕事に向き合う勇気が湧かなかったのだ。
家賃が払えるくらいの必要最低限の収入と出来れば食費が浮く適当なバイトを探し、コンビニエンスストアを選んだ。当然静かな深夜枠を。
それからなんだかんだでコンビニエンスストアでのバイトはもう三年目。息吸って吐いて飯食ってクソして寝る。その繰り返し。本当に何も起こらないままオレは二十 一歳になってしまっていた。大学生の友達は就職活動で忙しいようで、専門学生の友達は勉強した職種につき、愚痴りながらもオレからしたら充実した日々を送っているように見えた。
“オレ、いったい何をしているんだろう”
三年間、週に4回。バイトが始まる前の三十分はいつでもそんな悩みに脳みそを支配される。
オレはいったい何がしたいのだろうか? わからない。
このままで良いのだろうか? 良いはずない。
ならば何かをするのかい? ……いや、何もしたくない。とりあえず家賃が払えればいい。
そして、いつも“頑張りはしないけど、それなりにやろう”といった結論に落ち着く。死にたくはないからね。それに相対的に見て幸せなオレの暮らすこの国、今の時代ならば一人でならなんとか生きていける。頑張らなくてもご飯が毎日食べられるくらいならば。

信号待ちで止まった俺の脳裏にさっきニュースで見た隣の国の子供がチラつく。
かわいそうに。君は今のオレを見たら涙が出るほど羨むだろうね。君よりも頑張っていないオレが幸せに生きているんだから。やはりオレは幸せなんだ……オレは幸せか? ……やっぱりゲロ吐きそうだ。

バイト先のパイナップルマートに着いた。原付で15分弱の距離。家から近すぎず遠すぎずちょうど良い距離だと思う。よし、と小声で発し、少しだけ気合を入れて自動ドアをくぐった。
「あ、ハッちゃん、おはよう」
「ざーっず」
レジには寝癖のついた冴えないおっさんが一人立っている。パイナップルマートの店長だ。今はどこも人手不足なのだろうか? 店長は週に二度ほど夜勤にも入る。見た目はアレだが、いつでも優しくて、すごく気が利く良い人だ。
「今日さ、龍ちゃん少し遅れるって」店長がいつもの優しい口調で話す。
「そうですか。ちなみにどれくらいですか?」
「二、三時間って言っていたけど、どれくらいになるだろうね。龍ちゃんのお母さんちょっと状態良くないみたいでさ。もし忙しそうなら僕、少し残れるから遠慮なく言ってね」
「いや、大丈夫ですよ。店長、昨日も夜勤入ってたじゃないですか。オレ、なんとかするので、たまにはゆっくり寝てくださいよ」
「そう? 悪いね。いつもいつも」そして寝癖のついた頭をポリポリと掻きながらすまなそうに笑った。
「龍之介も事情が事情だし、オレは取り立てて予定のないザ・フリーターですから。その気になれば何時間でも働けるし気にすることないですよ」
オレは必死に笑顔を作るが頭の中では“こんな生活をいつまで続けるのだろうか?”なんてことを考えていた。幸せなはずのオレは悩みが絶えず、不安が消えることがないのだ。
事務所でパイナップルマートの黒い制服に着替えると、十分前だが、すぐにレジに向かった。
「店長、もういいですからレジ締めちゃってください」
ポンと肩を叩くと、店長は「ありがとう」なんて言いながら、イソイソと片方のレジを締め、続けてもう一台も締め始めた。

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