小説紹介(裕次郎)

アンダーハーツより愛を込めて 立ち読み 2


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ネットショップにだいぶ前に自費で作成した小説を追加しました。

立ち読み 1

立ち読み 2回目です。
売れて欲しい反面、これはかなりふざけているので評価がちょっと怖い、、、

立ち読み

チャンネルをニュースに回す。流れてくるのは嫌なニュースばかりだ。やれイジメで子供が自殺しただの、やれ痴情の縺れで人を刺しただの、やれ戦争だの、やれ飢えで苦しむ子供だの。
オレは寝転がってポテトチップスを摘みながらテレビを見ている。しかも半分も食べてないのにもうこの濃い味に飽きている始末。おそらく食べきれずに捨ててしまうだろう。そのせいかテレビ画面に映るガリガリに痩せ細った子供の顔を直視することができなくなってしまったが、それも一瞬のことで結局、惰性でポテトチップスを食べる手を止めることはしなかった。
“幸せ”っていう言葉はピンとこないが地球規模で相対的に考えてみると、オレはかなり“幸せ”な部類に入っているのだろう。寝る場所もあるし、着るものもある。贅沢さえしなければ食うことにも困らない。こんなニュースを見ていると、実感するとまではいかないが漠然とはそう感じる。
ニュースはさらに気が滅入るような情報を垂れ流してくる。隣の国の政治が悪くて親のない子供たちが道端で暮らしているとのことだ。完全に政治が一部の特権階級が贅沢するためだけに存在している。綺麗な服で奇妙なダンスを踊る作った笑顔の子供と、凍傷が悪化し足が腐った痩せた子供。痩せた子供はシケモクをふかし、隣ではもっと小さな子供が倒れて動かない……死んでいるのだろう。
テレビの中のことっていうのは決してテレビの中だけのことではない。同じ地球上で現在起こっているリアルなのだ。当たり前のように死んでいく子供たちがいる事実は確かに心が痛む……がしかし、ピンとこないのも事実だった。
なにしろ、世界では今も子供たちが食うものも食えずに死んでいっているというのに相対的にはかなり“幸せ”である国に暮らす自分は暖かい布団でゴロゴロしながらも人生に不満だらけなのだ。なんだか釈然としない。なんだかゲロ吐いてしましそうだ。まったくオレってやつはなんてアレなんだろう。とりあえずオレはもう飽きて食う気をなくしていたポテトチップスを無理やり全て食べつくした。あんな子供たちを見たあとでなんだか捨てるのもアレだしね。別にアレがどうってわけじゃねぇけど、せめてね、なんてね。
ゆっくりと振り向き時計を見る。バイトの時間が迫ってきていたオレはようやくパジャマを脱いだ。

時刻は夜の七時。
九月半ば。原付バイクはブモーと間の抜けた音を出し走る。夏の暑さもひと段落し、バイクで外を走るのが気持ちの良い季節になった。むしろ今日みたいに風が強い夜だと少し肌寒いくらいだ。しかしバイト先であるコンビニエンスストアに遅刻しそうなのでアクセルを捻りスピードを上げる。いい年してフリーターのオレは尚更肌寒く感じてしまう。

高校を卒業したあと勉強が嫌いなオレはすぐに就職した。自分が何をしたいのか、何もビジョンがなかったのだ。だからとりあえず金を貯めようと思った。何か明確に自分のやりたいことが見つかったときにある程度でもまとまった金があればすぐに実行に移せるだろう、とオレにしては意外と深く考えた末の結論だった。職場は眼鏡やコンタクトレンズ等のレンズを主に作るガラス工場。工場の敷地は広く野球場が二つ入るくらいで、従業員も200人近くいただろうと思う。オレが働いていたのは“エンド”と呼ばれる部署。
巨大な炉で溶かされた、ドロドロのガラスが円形に成型されたものがベルトコンベア上に落とされ流れてくるのだが、それをその最終地点でそれを取り出して検査し、梱包する部署。その工場内では最後の行程だ。それを海外の工場に送り、さらに細かく検査する。ちなみに他の部署で何をしているかは全く知らなかった。
ともかくオレの働く部署は溶鉱炉の影響で、まさに茹だるような暑さだった。その中での肉体労働は過酷であったが、仕事自体には特に不満はなかった。職場の雰囲気にも満足していた。明らかな元アウトローや、体中に墨が入った外国人、学生時代いじめられっ子であっただろう人、地方から職を探して出てきた人等々とてもバラエティに富んだ面子であり、その全ての人たちが本当に優しくいい人だった。給料は安かったが、実家暮らしだったのそれなりに貯金する余裕くらいはあった。
しかし、十ヶ月で……結局オレは一年も経たずに辞めてしまった。
原因は勤務時間帯だった。三交代制で朝番二日、日勤二日、夜番二日、で休みが一日、というシフトの繰り返しであり、昼夜逆転ならまだしも昼夜がヒッチャカメッチャカになってしまったことが全ての引き金だった。元々寝つきの良くなかったオレは明らかな睡眠障害に悩まされるようになってしまった。いつしか丸一日寝ていなくて死ぬほど眠い状態であっても眠れない、といった状態に陥った。睡眠が足りていないだけで人間は正常な判断が出来なくなる、ということをそのとき始めて知った。そして恒常的に睡眠が足りていないと人間の中からは余裕が消え去ってしまう……もしかしたら、だらしのないオレだけに限ったことのなのかもしれないが。
当時付き合っていた彼女がいた。ある程度将来のビジョンが固まり、収入も安定したら結婚できたらいいな、なんて思い始めていた彼女をオレはフッた……眠かったのだ。本当に眠かったのだ。会ったり、電話したり、メールをしたり、そういったことをしているときにもしも眠れたら一時間でも眠りたかった。眠れないのが彼女のせいに思えきてしまった。彼女の些細な行動の端々に嫌悪感が沸いてくるようになってしまった。そして会わなくなりメールで別れを告げ、その恋は終わった。
オレは眠かった。悲しいほど眠かった。そしてそれを嘲笑うかのように眠れなかった。いつしか仕事にも身が入らなくなった。彼女との結婚を目指し、働き、何かやりたいことが出来たら勝負する、その目標がなくなってしまった……と、また彼女のせいにしてオレは仕事を辞めることにした。そして何より眠かった。
職場の皆に申し訳ない、という気持ちを持ちながらもオレは辞表を提出した。何しろ皆と同条件で働いているのにも関わらず根をあげたのだから。

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