小説紹介(裕次郎)

未発表作品販売開始 アンダーハーツより愛を込めて 立ち読み有り

https://sidandnyancy.base.shop/items/16715101

ネットショップにだいぶ前に自費で作成した小説を追加しました。

まあ、ふざけまくった作品ですが興味のある方は是非!!

立ち読み

イントロダクション?

その男は細く長く、そして美しい指を持っていた。
明かり一つない密室の中、その指で手に入れたばかりのノートパソコンに電源を入れる。“ブンッ”と重たい音が鳴るとそれに続けてノートパソコンの内部からカチャカチャとせわしない印象の音が聞こえてくる。
懐かしい感覚のせいか男の胸の中に米粒ほどの期待が膨らんだ。しかし頭を左右に揺さぶり、自らに“世界に期待するのはもう止めろ”と言い聞かせる。
「……そうさ、どうせ希望を持った数だけ絶望しなきゃならないんだ」小声で呟いた。
モニターに明かりがともると、墨汁の海のようだった密室の内部に緑色の光で輪郭が生まれる。そこには何か一つでも存在しなければ成立しないほど、必要なもの以外何一つなかった。
男は正規の品ではない部品をノートパソコンのUSBポートに差し込み、それを介しインターネットに接続する。インターネットに接続するとすぐに紹介制のSNS(ソーシャルネットワークサービス)に繋ぎ、またしても正規のものではない方法でアカウントを手に入れる。
その指はしなやかに動き、地球上のどんなピアニストよりも優雅にキーをタッチした。そして、その指でプロフィールを入力し始めた。

“僕はいまとても苦しいです。
辛いことが立て続けに起きてしまいました。
起き過ぎました。
あまりにも起きすぎました。
僕にはもう耐えられません。
なので、僕はもう耐えることをやめようと思います”
 
男は一ヶ月前まで“愛”というものを信じていた。例えば空に雲があるように、ごく自然なものとして捉えていたし、例えば食器棚の目立つ所に飾ったグラスのように物質的な宝物としてさえ捉えていた。しかし“愛”の存在はまやかしだった。座敷童子やぬらりひょんといった、居るはずがないのに名前を持つ妖怪のように馬鹿馬鹿しい戯言でしかなかったと学習した。
男は何もかもがどうでもよくなった。何もする気が起きなくなり、本当に何かをするという行為を辞めた。そして、それから一ヶ月後の昨日、何もかもを破壊してやりたくなった。しかしながらと言うべきか、もしくは当然と言うべきか、個人が何もかもは破壊できるわけがない。
男のしなやかだったキーボードを叩く指の動きが止まる。
プロフィール欄の空欄はハンドルネームのみとなっている。
しばし悩む。しかし、二分ほどで“まぁいいか”と自らの名前をもじり、

【NAME・輝飛】

 と入力した。
 “輝飛”はすでに体のいい破壊の対象を決めていた。そして破壊の対象をもっと深く知ってからは介しつくしてやりたいと考えたためSNSを始めたのだった。
「……ぶっ壊してやる。バラバラになったら、その後でさらに切り刻んで磨り潰して粉々にしてグチャグチャにしてやる」
 手始めに輝飛は日記を書いてみた。

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