藤木の国のアリス~伽炉瑠博士の忘却装置~

藤木の国のアリス ~伽炉瑠博士の忘却装置~ 25

穴に落ちたアリスは確か・・・・・・部屋の中に落ちて、大きくなったり小さくなったりしながら試行錯誤して外へ出ていた。
組子は必死に幼い頃に見た不思議の国のアリスの映像を思い出していた。
部屋を探索すると、壁に掛かる赤い千鳥格子柄の小さな袋を見つけた。手に取り、恐る恐る手を入れると、やはり小さな小瓶が入っていた。
小瓶には「DRINK ME」と書かれている。
鍵をポケットにしまうと組子は大きく息を吐き、雑念を消すと、小瓶の液体を一気に飲み干した。舌先がぴりぴりと痺れるような味だった。
体がみるみる小さくなっていく。
予想はしていたものの恐ろしい体験だった。自分の体が小さくなるというよりも回りのものが大きくなっていく感覚に近く、周囲の物全てに押しつぶされそうな気になった。
小さくなったことにより、テーブルの下に大きなケーキ――小さくなっているので実際の大きさはわからないが――があるのを発見した。
確かアニメにあった。これは大きくなるケーキに違いない。
組子はそれを一摘み取り、抵抗はあったがそのまま鍵の入っていないポケットに押し込んだ。タッパやビニール袋がないのが悔やまれた。それでも、そうしたのは組子がこの家の中で巨大化してしまったアリスが困ったことを知っていたからだ。
そのまま先ほど足下に見つけたミニチュアのような小さい扉へと向かい、一緒に小さくなった鍵で扉を押し開けた。
外に出た瞬間に花や草木たちの歌が大きく聞こえた。
歌詞の意味はわからなかったが、その声質は穏やかで、賑やかだ。どうやらウェルカムソングのようだ。
その歌声に泣き声が交じっているのに気が付いた。
先ほどの老人の泣き声ではない。恐らく少女、それもまだ幼児の泣き声だ。
声の方向を探るとどうやら今出てきた家の裏手のようだった。
組子は振り返って今出てきた家を確認した。それはもう素敵な家だった。可愛らしくて……ってそんなこと言っている場合ではない。
泣き声の方向へ歩き出した。家は相当大きかったのか、裏手まで行くのに、息が上がるほど疲れてしまった。
ふと視界が暗くなった刹那、バケツ十杯分ほどの大きな水の塊が頭に直撃してしまった。
ゆっくり見上げると、大きな少女が泣いていた。

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