藤木の国のアリス~伽炉瑠博士の忘却装置~

藤木の国のアリス ~伽炉瑠博士の忘却装置~ 24

 

どんな説明もつかないだろう。
組子は小さな部屋に立っていた。縛り付けられたはずだったのに、両の足でしっかりと立っていたのだ。いつも通りの制服姿。不自然なところは何もない。
しかし、立っている場所はいったいどうだろう? 実に奇妙だった。目に映る全てが歪曲している。言葉にしてわかるだろうか? 床よりも天井が広いというこの世界・・・・・・なにかも、そもそも世界がおかしいのだ。
部屋には全てが曲線で、歪な家具が隙間なく並べられている。
VRでも説明できない。以上の世界に確実に組子が存在しているのだ。
目の前にあるぐにゃぐにゃに曲がったテーブルの上に古ぼけた金色の鍵があった。
そういえば鍵があるからそれをとれ、と泰葉は言っていた。
そのあとは・・・・・・確か・・・・・・外に出ろ・・・・・と。
部屋を見渡してみた。それだけで目が回りそうだった。
結果、カーテンの掛けられた窓はあるがドアはなかった。
カーテンを開けるとそこにはまた奇妙な光景が広がっている。
まるで絵本の中に入ったかのような……いや、本当はもうわかっていた。ただ、そう思うことが馬鹿みたいだったのだ。
そんな組子の感情をあざ笑うように窓の外をウサギが走りぬけていった。
そう、ここは不思議の国、ワンダーランド。アリスの世界。
組子は不思議の国のアリスの本を読んだことはなかったが、ディズニーのアニメ映画は子供の頃に何度も見ていた。ここはまさにそれだった。窓の外では、見たこともない花が咲き乱れ、草木が歌い、笑っていた。比喩ではない。実際に顔のついた花が声を出して笑っているのだ。
窓枠を確認するがどうやらハメ殺しのようで取っ手の類は一切ついていなかった。
とりあえず一度目を閉じた。
ぐっと瞼の奥に力を入れて目を見開く。
それでもここはワンダーランドだった。
古典的だとは思ったが、ほっぺをつねってみた。
変わらず花たちは歌っている。
わかっていた。この実在感は夢ではない。
不安な気持ちが視線を足下に落とした。
窓の下の足下に小さな扉を見つけた。
もう、考えない。考えたって仕方がない。ワンダーランドにいることを認めよう。そして、泰葉が言っていた言葉を信じよう。「大丈夫、心配ない」という言葉を。泰葉は信じるに足る人物だ。親友だ。
組子はテーブルの上の鍵を取ると、幼い頃に見た不思議の国のアリスのアニメを思い出した。なぜ今、不思議の国にいるのかは考えない。ここから出る方法だけを考えるのだ。