藤木の国のアリス~伽炉瑠博士の忘却装置~

藤木の国のアリス ~伽炉瑠博士の忘却装置~ 14


パズルの足りないピースがパチパチとはまっていく感覚があった。同時に胸が締め付けられる。
昨日の予想の大方は当たっていた。
自分のした行為によって泰葉は心のバランスを崩してしまったのだろう。つまり、それだけの苦しい思いをさせてしまったのだ……和也と付き合うのは駄目なことだったのだろうか? 我慢すべきだったのだろうか? いくら自分と和也が好きあっていたとしてもそれは許されないことだったのだろうか? 胸の締め付けを緩めようと理屈で考えるが締め付けは強くなる一方だった。
 曇りガラス越しに院内の泰葉のシルエットを探してみた。
しかし、見当らなかった。
ガラスの透明度から考えると、顔の判別までは出来なくとも制服を着た人物がいるかどうかはわかるはずだ。しかし、どこにも泰葉はいない。確かに泰葉と組子がこのフロアに降り立つ時間にタイムラグはあった。ただ、診察待ちが終わるほどとは思えない。込み合っているとは言い難いが、曇りガラス越しでも10人以上は診察待ちをしている。込み具合から推察するとやはりおかしい。
そこまで思い至った途端、最悪な想像が組子に襲い掛かってきた。
“……もしかしたら、泰葉が待合室で暴れてしまって、強制的に診察室に・・・・・・”
悲壮な顔を浮かべながら暴れる泰葉を想像してしまうと、このままただ後を着けているだけにもいかないだろうと思った。いい加減、ちゃんと話し合わなければいけない。泰葉とも自分とも向き合わなければならない。
今の今まで、泰葉に何を言われようとも和也と付き合っていきたいと思っていた。気持ちが惹かれあっただけ。こればっかりは仕方がない。そう思っていた……が、違うのかもしれない。さらに直感告げる。
“これは違う”と。
瞳いっぱいに涙が溜まっていた。和也には本当に申し訳ないと思うけれど、つきあい続ける以外の選択肢も視野に入れなければいけない。それで泰葉が救われるか? と思うと肯定できないが、事態は全ての可能性を考えて話し合わなければ行けないところまで切迫しているということだけはわかった。
組子は意を決してクリニック内へと足を踏み入れた。
診察を終えた泰葉を絶対に逃がさないようにしようと、そして二人でどこかに移動して話し合おうと決めたのだ。
受付の看護婦に「どうされました?」と聞かれたので、付き添いです、と答え、待合室の長いすに腰を下ろした。
数分後、診察室の扉が開かれた。
中から出てきたのは中年の男性。どこからどう見ても泰葉でないのは明らかだった。大きなクリニックではないので診察室も一つしかない。次の患者が呼ばれた際に、中をこっそり覗き見るが中にも泰葉はいなかった。
泰葉はここに来たわけではなかったのか? だとしたら、どこへ?
組子は慌ててクリニックを出た。
クリニックの外で暫し考える。先ほど、このフロアはすべて見てまわったはずだった。確かに他には何もなかったはず。
唯一あったのはトイレだった。