藤木の国のアリス~伽炉瑠博士の忘却装置~

藤木の国のアリス ~伽炉瑠博士の忘却装置~ 12


家に帰り、部活終わりの和也からの電話を部屋で待った。その間は先ほどまでのくるくる変わる泰葉の様子を思い浮かべていた。
色々考えたが、最終的には自分がそれだけ組子を傷つけてしまったのだろう、という結論に落ち着いた。
19時過ぎに掛かってきた和也からの電話で、今日の件を相談するが、和也も同様の意見だった。
罪悪感に体を支配されてしまう。泰葉のことが好きなことに嘘はないはずなのに、今は誰よりも泰葉が恐ろしい。そんな風に思うこともきっと許されないことも理解していた。だからといって遠慮して和也と付き合わないことが正解だとは思えなかった。
後悔や過去に対する考察はできても。今後どうするべきかは一つも浮かばなかった。
電話を切ると風呂も入らずにベッドに横になった。
一つだけ棚に上げていた件があった。和也にも相談しなかったことがある。
紅白の千鳥格子のカプセル剤のことだ。
あれを飲んで泰葉は変わった・・・・・・戻ったのかもしれない。
カプセル剤の正体は考えたところでわからなかった。ただ、俗に言ういかがわしい薬だとは思えなかった。
一つだけわかっていることは、泰葉は今も一人で悲しんでいるということ。
そして、謝ることも自分には許されていないということ。
明日、泰葉に会えば何かがわかるかもしれない。

しかし、翌日はもっとわけがわからなかった。
それも二時間目の終わりのことだった。
「組子、今日、昼一緒に食べようね」
昨日と全く同じ光景が目の前に広がったのだ。
泰葉はまた何もかもを忘れているようだった。
一緒にトイレに行き、食事を取り、一緒に下校した。
そして、説明を迫られ、昨日よりも混乱した頭で泰葉に聞いて聞かせた。
泰葉はまたピルケースから紅白千鳥格子のカプセルを咽喉を鳴らして、飲んで、私を罵って走り去ってしまった。
時間割以外はまったく同じ道筋をなぞるように時間が進んだ。
しかし、今回は道で立ち尽くすような真似はしなかった。
泰葉の後をつけたのだ。
なんとかこの状況を理解したいと行動を起こしたのだった。
泰葉は普段どおり駅へと向かった。しかし、乗った電車は泰葉の家の方向とは反対側へ進む電車だった。
泰葉にバレないように、そして、同時に見失わないような距離をとりつつ同じ電車に乗り込んだ。泰葉は真っ赤に腫らした目を隠すように終始俯いていた。
泰葉が降りた駅はJR立川駅。この辺りでは一番の繁華街だ。大抵の用事はここで済ますことができる。なので、降りた駅から泰葉の行動を推察することはできなかった。
人ごみの中、泰葉とつかず離れずの距離を取りつつ改札を出た。泰葉はまっすぐ駅ビル・ルミネへと入っていった。そして、エスカレーターで7階の書店へと向かった。書店で泰葉が手に取ったのは飛び出す絵本だった。
タイトルは“不思議の国のアリス”だ。