弱虫時計と君だけの神様 ☆立ち読み②☆

第一章

弱虫時計・1

汗と煙草とアルコールの匂い。薄暗い箱の中に赤や青のチープなライト。

髪の毛を金髪に染めた俺は細身のジーンズで上半身は裸。

小さなライブハウス。客席にはそれなりの人数。

ベースが走り、ドラムが跳ねる。ステージの真ん中の俺はギターをうならせ、マイクに噛り付き、世の中に対する不満をぶちまける。時には酔っ払った客と大喧嘩。立ち入り禁止のライブハウスと同時に俺たちに勲章が増えていった。

ライブ後は打ち上げと称してナンパ。お持ち帰り。彼女にバレて平謝り。

しかし、こりもせずに繰り返す。

そう、ロックンロール!

俺はロックに生きていくと心に決めていた……が、そんな日々も今はもう昔の話。

当時、一番なりたくなかったもの、それはサラリーマンだった。なぜなりたくなかったのだろうか? その明確な理由は思い出せない。もしかしたら理由なんてなかったのかもしれない。ただ当時の俺にはサラリーマンというものがどう見てもかっこ悪くしか見えなかったのは覚えている。

Q・今の俺の職業は何か?
A・ザ・サラリーマン。

来る日も来る日も上司の指示通りのエリアの会社にランダムで飛び込み、ヘコヘコと頭を下げているザ・サラリーマン。事務用品を買ってください、なんて名刺を渡すのもお手の物。もちろん大半は無碍にされるが、へこたれてなんていられない。逆に会社にいるときには、社員旅行にこんなプランはいかがですか? なんて頭を下げられ、無碍にたりするのだから、世の中はお互いさまなのだ。
昨日も一昨日も明日も明後日もそんなことの繰り返し。もちろん細かく言うと他にもたくさんあるが、まあ、ともかく繰り返しだということは間違いない。

月曜日から毎朝通勤電車に揺られ、金曜日。

仕事帰りに同僚と酒を飲み、上司や先輩、会社の愚痴をこぼす。それは金髪にしていた当時、世界で最も醜いと感じていた光景だった。向上心の欠片もない言い訳じみた無意味な愚痴では何も解決しないはずだし、なによりダサい。しかし、今では俺自身が世界で一番醜かったはずの光景の一部になっていて、あまつさえ、それが一番の楽しみになっている。さらに言ってしまえば醜いはずだったその行為が日々を乗り越えるためのカンフル剤にすらなっていて、明日もがんばろう! なんて思えるから不思議でならない。

……そうなのだ。
サラリーマンもなったらなったで、なかなかどうしてこれがそこまで最悪でなかったのだ。
時折、なんのために頑張っているのか? なんていつぞやの歌謡曲のような気持ちにならないわけではないが、最近、ようやくそれにも答えができた。家族のためさ。これまた歌謡曲のフレーズ通りで参るが、本心だからしかたない。

『京市、私ね……』

数ヶ月前のある日、俺の部屋で敦子が不安で泣きそうなのか、嬉しくて噴出してしまうのを我慢しているのか、まったく判別つきにくい顔で話し出し、すぐに言葉を止めた。嘘だろ? という気持ちも確かにあったが、思い当たる節がないわけではなかった。

『……できちゃったみたいなの』

俺は咄嗟に笑顔を作った。その笑顔は上手にできたとは言い難かったが、赤ちゃんは本当にできた。

『そっか。じゃあ結婚しよう』

おそらくは自然に言えたと思う。

ロックだの、自由だの、大人は汚いだの、そんなモラトリアムだとか言われるモノから足を洗ったのはそれきっかけだった。

正直、三十歳がすぐそこまで迫っていたし「年だな」なんて気持ちがなかったといったら嘘になる。安定を選んだ俺が、当時の仲間から“逃げだした”と見られていたのは感じていたし、自分自身でもその認識はあった。しかし、その後、ブームのようにほとんどの仲間が足を洗い出したのは、きっと似たり寄ったりの理由だったのだと思う。バンドってものは、上手くなればなるほど上に行けばいくほど、自分の限界を突きつけられ、才能の無さを思い知らされるシステムになっていて、好きだけで続けていけるほど時間はゆったりとは流れていなかった。

だからこそ、嬉しかったのか、悲しかったのか、どちらかわからないが、敦子の妊娠はある意味では俺を安心させてくれたのは事実だった。

革ジャンを脱ぎ捨てた俺はスーツを身にまとった。別に働くところはどこでもよかったのだが、敦子はスーツを着ている旦那を送り出す主婦に憧れていたようだったので、業務内容なんてものは気にせず、そこを一番意識して仕事を選んだ。

ニュースでは不況だとか言っているが選ばなければ仕事はいくらでもあった。なので、比較的あっさりと仕事は決まった。

長かった金髪も黒くして、耳の上でそろえた。美容室の鏡に映る自分が情けなく感じたが、今ではそんな自分にもすっかり慣れた。もちろん大会社ではないので安月給だ。社長の口癖は「どこかに景気のよい話はないのか?」なんてもの。結局は安定なんて言葉とは無縁だったが、今のところなんとか生きていけている。

若いころ、社会に溶け込めるはずなんてない、と思っていた俺は、意外にもすんなり、それはもうピタッとはまるように社会人になることに成功してしまった。実際はまだ働きはじめて一年も経たないのだが、本当にバンドマン時代が遥か過去のことに感じてしまう。

敦子の大きく張り出たおなかを撫でていると、この先、何があろうとも、どこかしらで働いて、休みは敦子と買い物でもしたり、子供と喧嘩したりと、そんな風に生きていくのだろうな、ということは容易に想像できた。こいつが生まれ、そして成長していくのと同時に俺は老け込んでいくのだろう。そんな悲しいことが微笑ましく思えるから不思議でならない。

夜七時。仕事帰り。踏み切りの事故の影響で電車は満員。

目の先二センチの距離には酔っ払ったおっさんのどアップ。ピタッとはまるように社会人になることに成功したのだが、満員電車だけは慣れることができなかった。他人と距離が明らかに近すぎる。にも関わらず、不潔感丸出しのおっさんや、死体でも家にあるのか? と疑いたくなるくらい必要以上に香水を振り掛けたおばさんなどが、なんの審査もなく乗り込めるのだから困ったものだ。もちろん可愛らしい学生や、綺麗なOLだったら良いかというと、それはそれでなんだか変な勘違いをされやしないかと不安になる……なんてことを考えていると最寄り駅であるJR福生駅に着いていた。

電車から一歩足を踏み出すと、外の冷気が体を包み込んだ。満員電車のむわっとした生温さよりはずっとマシだが家に着くまでには体は冷え切ってしまうだろう。そろそろスーツの上に羽織るコートが必要になってきそうだ。安いコートでも買おうか……なんだかこうやっておじさんになっていくのだな、と多少嫌な気分にはなったが、寒さには勝てないだろう。

改札を抜けると駅構内を抜けて吹く風にさらに体温を奪われる。実際のところどうかはわからないが、福生市は東京とはいっても西多摩という田舎に区分される僻地なので会社のある新宿から帰ってくると2、3度ほど体感温度が低い気がする。それでも天気予報では同じ“東京”で見るのでいつもどこか腑に落ちない。

福生駅からは歩いて十分ちょっとで自宅のアパートへたどり着く。本来ならば東口から出るのだが、今日は100円ショップで買い物をするために西口へ足を進めた。仕事がトラブったせいで疲れていたし、満員電車のおっさんの顔のアップでさらに体力を奪われていたので、できることなら買い物なんて明日にしてしまいたかったのだが、家には誰もいないので仕方がない。レンジでチンするご飯と紙皿を買うのだ。ちなみに紙皿は洗い物が苦手な俺の暮らしの知恵……というか極端な面倒くさがりの俺の最終手段だった。昔はそんなことなかったのだが、今はもう敦子がいないと身の回りのことを何一つまともにできなくなってしまっていた。

敦子と一緒に住み始めて半年、俺はまた一人暮らしに戻っていた。いや、何もワイシャツの口紅が見つかったわけでも、香水の匂いを怪しまれたわけでもない。そもそも浮気なんてしていない。ただ単に、出産が近づいた敦子が名古屋の実家に一時帰っているだけだ。彼女の両親たっての希望で敦子は実家で出産することとなったのだ。仕事を始めたばかりだったこともあり、大きな休みを申請することも気が引けたので、立ち会うことは諦めた。もちろん、生まれてくる子供にすぐに会いたいな、なんてことは人並みには思ったし、敦子を心配な気持ちがないわけではない。ただ、立会い出産に対して、一人っ子の敦子を大切に育ててきた彼女の両親の頼みを断るほどの拘りはなかった。敦子自身は多少淋しそうではあったが。

ホームの階段を降り始めたとき、スーツの内ポケットが震えた。携帯電話を取り出し、確認すると“京市ぃ、淋しいよぉ!”なんて涙の絵文字をふんだんにあしらったメールがちょうど入ってきていた。俺の仕事が終わり、駅に着く時間を見計らってのメールだろう。

“俺も会いたい。でもちょっと我慢だ!”なんてメールを作りながら、ホームの階段を下り、100円ショップに向おうと思った瞬間だった。

悪寒が走った。

視線だ……誰かに見られているような気がした。いや、そんな生易しいものじゃない。鳥肌が立つほどの鋭い視線を感じたのだ。慌ててその方向へ振り向くが、その先にはホームの出口に隣接している交番があるだけだった。別に警察官が俺を訝しげな目で見ていたわけでもなく、かといって他に誰かがいたわけでもなかった。

視線を感じた先には掲示板があった。

溜息が漏れた。

視線の正体に気付くと心底情けなくなった。何しろ、よくある逃亡犯や、行方不明者の顔写真付きの張り紙の顔の視線を感じてビビッていただけだったのだから。

……疲れきっているのかもしれない。

ただ、慌てて振り向いた手前、目の前の警察官には怪しく映るかもしれないと、そのまま何気なく交番に近寄り、その張り紙が張ってある掲示板をじっくり見ることにした。見覚えのある顔が! という表情を浮かべ、迫真の演技で無駄な時間を作り出す。まったく一秒でも早く家に帰ってスーツを脱ぎたいというのに……そういえばこんなものじっくりと見たことなかった。看板には凶悪犯逃亡中だの、おばあちゃんが帰ってきていませんだの、そんな張り紙が写真付きで安っぽい紙に印刷されている。挙句、大きさや写真の載せ方が単一過ぎて、本当に探す気なんてないんじゃないかと疑ってしまう。正直、電柱なんかによく張ってある迷い犬の張り紙のほうがよっぽど印象に残る気がした。雑な仕事してやがるくせに一時不停止や、10キロオーバーなんてものは丁寧すぎるほど取り締まったりしているから評判が悪くなるんだよ、警察は! なんて無責任なことを考えながら、一番右側にある行方不明の写真に目を向けた。

その瞬間だった。

あまりの衝撃で心臓が本当に一瞬止まった。もしかしたら昔の不良ギャグ漫画みたいに目だってびょーんと飛び出してしまっているかもしれない。先ほど感じた鳥肌が立つほどの視線の本当の正体はこれだった。

行方不明者の張り紙に見覚えがある顔があったのだ。今回は演技じゃない。これが演技だとしたらハリウッドスターにだってなれる。写真の下に記載してある名前を確認する。そして、もう一度顔写真に目を向ける。間違いない。

……梢だ。

福生市内にある七福神を祭った神社。熊川神社。

二月の深夜で、しかも綿のような雪がハラハラと舞っている。

厚手の衣服で隠れていない頬だけがピリピリと寒さを訴えてきていた。何を話していいかわからない俺はポケットに手を突っ込んで、梢と二人、

その細い石畳の道をゆっくりと歩く。雪が降り始めてからまだ誰も歩いていない石畳は歩くたびにシャクシャクと小気味のいい音を立てた。

真っ赤な鳥居をくぐり、境内の前まで来ると自然と足が止まった。

振り返ると、真っ赤な鳥居に四角く切り取れた世界にハラハラと舞う雪と銀色に輝く石畳、その上にはまっすぐ並んだ俺と梢の足跡だけが描かれていた。

「梢、見てごらん」

「すごく綺麗だね」

梢が俺を見上げて言う。そんなことはないのだが、なぜだか久しぶりに目が合ったような気がした。すると、すぐに梢が俯いた。

「……あのね、深津さん」

梢が何を言いたいかはわかっていた。ただ、俺も一応男なので、梢に言わせるくらいなら自分で言ったほうがいいだろうと思い、次の言葉を待たずに抱き寄せた。

「俺は梢が好きだ。なぁ、よかったら付き合ってくれないか?」

150cmあるかないかの梢は俺の胸に顔を当てて頷いた。

「なぁ?」と俺は声をかける。「なあに?」と梢は顔を上げた。

そして初めて梢とキスをした。

唇を離すと、梢はニンマリと笑い「超嬉しいぃぃ」なんて言いながら体内から這い出ようとする幸福感を押さえ込むように体をグニグニと動かす。俺のキスで喜ぶ梢が心の底から愛しいと感じた。

「ねぇ、深津さん。もう一回好きって言って!」

「さっき言ったし、なんか恥ずかしいから嫌だよ」

「駄目。超駄目。言ってくんなきゃ別れる」

「もう? 早くない? 付き合ってまだ三分くらいだぞ?」

「なら早く言いなさい!」

観念した俺はもう一度梢を抱きしめてから「大好きだよ」と言った。もっと気の利いたことを言いたかったが、この言葉だけで全てが詰まっていると思った……なんて言い訳かな? なにしろ抱きしめたのは顔を見ながら言うのが恥ずかしかったからなのだ。梢はまた体を捻らせながら「くぅ~、幸せだぁー!」と胸に顔を埋めてきた。たまらなくなった俺は無理やり顔を上げさせ、もう一度キスをした。

七つも年の離れた梢。まさかこんなに梢が愛しくなるとは。

目が合うと梢は照れくささを隠すように、慌てて鳥居に切り取られた世界を指差した。

「なんだかさ、雪のせいだろうけど、世界が光っているように見えるね。もしかしたら、お二人さんおめでとー、って誰かがライトアップしてくれているのかも、なんてね。えへへ」

見上げて笑う梢の口の中に綿のような雪が入ると「冷たいっ」とさらに大きな声で笑った。雪は梢の黒髪にも薄っすらとかかり、その笑顔もキラキラ輝く世界の一部のようで俺の胸は最高潮に高鳴っていた。

記憶が夏の雨のように唐突に蘇ってきた。いや、蘇ってきたというよりも、まるで自分自身が一気に過去に吹っ飛ばされたような感覚に近い。鮮明に雪の冷たさや、境内の匂いを感じたのだ。梢の暖かい感触までもが、たった今まで腕の中にあったかのような錯覚に陥ってしまうほどだった。

……何で俺は梢をあんな目に合わせてしまったのだろうか? 五年前の最低でクズで馬鹿野郎な自分を思い出すと、意識もせずに大きなため息をついてしまう。その吐息を契機に呼吸を忘れていたことに気がついた。一時停止していた心臓もようやく動き始め、その反動で起こった体内の酸素不足を取り戻すかのごとく、鼓動は激しさを増していく。しかし、それでも失った分の酸素を取り戻すにはまだまだ時間が掛かるようで、激しい呼吸も、胸が張り裂けるほどの鼓動も収まる気配がなかった。なんとか落ち着こうと目を閉じるが、最悪なことに俺はまたしても過去へと吹っ飛ばされてしまう。目を閉じたせいか、吹っ飛ばされた過去はまたもや暗い夜だった。

実家のすぐ近くにある川沿いの南公園に入る短いトンネルを俺と梢は手を繋いで歩いている。トンネル内のオレンジ色の街灯に照らされた梢はまるで昔の映画の登場人物のようで綺麗だった。
おそらく付き合いだして一週間かそこらの場面だろう。この公園を突っ切るのが俺の家から彼女の家までの近道だった。

「なぁ、梢。見てみな」トンネルを抜けてすぐ俺は夜空を指差した。背の小さな梢はその先を見上げる。

「わぁ! すごーい。プラネタリウムみたい」

星空を模したはずのプラネタリウムを綺麗な星空の代名詞に選ぶ梢のふざけた感性が可愛らしくて仕方がなかった。まあ、言われてみれば確かに街灯の類の一切ないこの公園から見上げる夜空はプラネタリウムさながらだ。俺も梢に合わせて十分ふざけた感性になってしまっているようだ。それが理由になるかはわからないが俺は繋いだ手に力を込めた。

梢はなぜか恥ずかしそうな顔をして言った。

「あのさ、たった今からさ、深津さんのこと“京ちゃん”って呼んでいいかな?」

いつでも天真爛漫な梢が照れるポイントは、いつでも俺をドギマギとさせた。世間一般で“心”なんて言われている部位を、裁縫セットの針置きのように待ち針でチクチクと突かれているようだ。明確な理由もなく嬉しくなった俺は何が何でもたった今、梢とキスがしなければ気がすまなくなった。

「なぁ、梢。ヤバいよ? 今、この瞬間俺たちがキスをしないときっと飢餓で苦しむ子供が増えてしまうような気がするんだ」

「はぁ? 何それ? 素直にキスしたいって言えばいいでしょ?」

「いや、違うんだよ。俺がしたいわけじゃなくてさ、病気の子供を増やすわけにはいかないと思うだけだよ」

必死で笑顔を噛み殺しているのか、梢は不自然なほど口を一文字に結んでいる。そして、無理やり呆れた顔を作った。

「もう、京ちゃんは照れ屋だなぁ。まあ私としても飢餓で苦しむ子供たちをこれ以上この地球上に増やすわけにはいかないとは思うのよね」

俺たちは夜空と冷たい風しかない公園の真ん中で立ち止まりキスをした。

唇を離して顔を確認するとさっきまでの表情が嘘のようにまた照れた顔に戻っている。当然のように力いっぱい抱きしめてしまう。

「俺の夢はね、バンドで成功して、素敵な歌でお金持ちになって、梢を毎日エステに通わせてスリムにすることなんだ」

すると梢は腕の中で「ひっどーい! 私が太っているみたいじゃん。一体私のどこが太っているっていうのよぉ! エステなんて必要ないの!」と言って、自らのわき腹を摘むと「……うーん。やっぱりお願いしようかなぁ」なんてクルクルと表情を変えて話す。俺の心はハリネズミのように無数の待ち針が突き刺さる。

どうしても抱きしめた手を離すことが出来なかったので二十分の帰り道を二時間も掛けてしまった。二月の夜だというのに。

耐え切れず俺はそこで目を開いた。なんとか呼吸は通常にこなせるようになっていたが、鼓動は収まる気配がなく、今にも胸をぶち破って心臓が目の前に飛び出してきそうだ。

……なぁ? 何があったんだよ梢? 行方不明? 失踪? なんだそりゃ?

疑問符だらけの俺に、さらに追い討ちをかけるが如く過去の自分への後悔が酸素の代わりに血液に乗って毛細血管の隅々にまで行き渡り体中を満たす。後悔を伴う黒い疑問符が頭上に飛び出しているような感覚……それがまた重たいのだ。

俺のせいなのか? 俺が馬鹿だったからそんなことになっちまったのか? 俺が君を傷つけたから?

「いや、まさかな。もう五年も前の話だ。関係があるわけない」

希望的観測を口に出して打ち消そうと試みるが、疑問符は黒くて重いまま俺の頭の上から離れることはなかった。そりゃそうだ。だからって俺が良い事をしたわけじゃないのだから。

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http://sid-and-nyancy.jimdo.com/novel/

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