世界不思議発見~最終回~

夜だった。
雨が降っていた。
小さな公園は夜と雨に隠れ、世界から切り離されいた。

誰もいない。誰にも見られない。
そんな場所にしか徹子は泣く場所を見出せなかった。

雨に濡れ、ブランコに座りながらしくしく泣いている徹子を街灯がぼんやりと照らしている。
「・・・・・怖いものなんてないと思っていたわ」
徹子の声は雨の音にかき消される。そんなときにしか自らの弱い部分を口に出せない自分がやりきれない。
咳を切ったように泣き出してしまう。

「私にも怖いものあった・・怖いの・・・私怖いの!!」

顔をあげ、降る雨にバイク事故で死んでしまった英二の姿を思い浮かべてしまう。

「・・・英二、どうしてあなたは逝ってしまったの? 私怖いの! 思い出が・・・、あなたとの思い出が怖いの、怖くて仕方ないの!! 楽しい思い出も、苦しい思い出も、あなたとの思い出が怖くて仕方ないの!! ねぇ、どうして? どうして私がマコト君とあんなことをしてしまったから? あんなことをしなかったら生きていてくれたの? 私、そんな苦しい思い出が怖いの・・・ねぇ怖いの!!」

徹子は泣き崩れた。喚き崩れた。叫び崩れた。

それでも雨は一切の音を掻き消してくれる。

そのとき、強い光が公園いったいを包んだ。
見上げる徹子。
そこには巨大なUFOが浮かんでいた。
何年も逃げ続けたが、ついに母星の船に見つかってしまった。
徹子はもう逃げなかった。きっと逃げようと思えば逃げれただろう。それでも逃げなかった。
なぜならそこにいたのは、夫婦宇宙海賊の英二と徹子の徹子ではなく、ただの黒柳徹子だったから。

「・・・もう未練はないわ。地球にも、この命にも・・・、どうだっていいわ。この恐怖が消えるのなら今すぐに消え去りたい・・・」

光は徹子一点に集中し、徹子を母船へといざなう。

徹子の体はすうっと浮き上がり、宇宙船へと吸い込まれる。

そのとき、徹子の耳に大きな足音が聞こえてきた。この雨音よりも大きな足音のほうに目をやると、そこには草野仁が大きな体を揺らし、走ってきていた。
驚いて目を見開き、徹子は叫んだ。

「来ちゃだめ! 来ちゃだめよ仁さん! あなたまで捕まってしまう! あなたは人間なんだから! 私と一緒に捕まることはないわ!」

「徹子さん! 行っちゃダメだ! 今、助けるから! また逃げよう! みんなで逃げよう!」

「もういいの! もう英二もマコトくんも城戸真亜子も吉村作治もいなくなってしまった! 今更逃げたってしょうがないわ!」

「そんなこと言わないで! 楽しかったじゃないか! みんあで逃げていたあの修学旅行みたいな日々は宝物みたいに輝いていたじゃないか! それに・・・それに!!」

飛び上がり、徹子に飛びつく仁。
「それに、僕がまだいる!!」

二人は絡み合って光の中で宇宙船に吸い込まれる。

「仁さん・・・・・、だ、ダメよ! 離して! あなただけでも逃げて!」

「嫌だ!」

「わがまま言わないで、私もう怖いの、あの日々を壊してしまった思い出を背負って生きていける自信なんてないの!!」

「徹子さんが壊したわけじゃないじゃないか!」

「そんなことない。私がマコト君とあんなことをしてから、なにもかも壊れて――」

徹子の唇を仁が塞いだ。

ビックリ顔の徹子。時間が止まったような錯覚に陥ってしまう。

ようやく離れた唇で仁が優しく声を出した。

「徹子さん、確かにあなたの言うとおり、思いでは恐ろしい。だけど、徹子さん、それでも自暴自棄になって死んでしまってはダメだよ。あなたにはまだやることも、できることもある。あなたにしか出来ないことだってある。だから僕とまた逃げよう」

「・・・いいの? 私、生きたいと望んでもいいの?」

「当たり前じゃないか。あなたの恐怖を消し去ることは僕にはできない。それでも、僕はあなたの側にいたいんだ。あなたの怖さを半分、分けてくれないか?」

徹子は仁のたくましい体に抱きしめられた。

「いいの?」

「ああ、もちろん。それじゃぁ、行こうか!」

仁はホルスターから光線銃を抜き、宇宙船に向かって、何発も撃ち込む。

「悪いな、宇宙警察さんよ、ボッシュートだ!!」

宇宙船は小さな爆発を起こし、二人を吸い込む光がふっと消えた。

急激に落下する二人。

「徹子さん」
「仁さん」

落下しながら、キスを交わす。

地面が迫ってくると、仁はパチンと指を鳴らした。

すると、どこからか、意思をもった飛行バイク”ミステリーハンター”が飛んできて、二人をさらうように載せ、北へ、北へと飛んで行く。

「徹子さん、いつものセリフ言ってやりな!」
照れたように笑ってから、キッと宇宙船を睨んだ。そして、中指を立て、

「あたいを捕まえようなんて百億光年はやくってよ!!」

終わり。

・・・・・何やってんだ俺は。

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